母にプチ整形を勧められた話
またまた「毒母ですが、なにか」の感想です。
何故あんなにも恵まれた両親からモンスターなりつ子さん(主人公)が生まれたのでしょうか。
私の母は、りつ子(主人公)の様に教育ママでもステージママでもありませんでしたし、母自身学のある人ではなかったので、勉強でうるさく言われる事はありませんでした。(むしろ放任なくらい)
しかし、教育とかには疎いくせに人一倍見栄っ張りな所があったので、母も大きな環境の変化があったら、りつ子までは行かなくともあんな感じになっていたのかもしれません。
まぁ、りつ子さんとは大分ベクトルの違う母ですが、なんでこんなにも心がザワつくのでしょうか・・・。
りつ子は娘(星良)を悲願である慶應に入学させた次は、「慶應卒の女子アナ」に仕立て上げようと、過食とリスカでボロボロな娘をプロデュースします。
ダイエットと芸能界デビューは星良の意思でもあったので、母娘の努力の賜物だったと思うのですが、次にりつ子は星良に二重瞼の手術の話を持ち掛けたのです。
実は、何度か母に二重瞼の手術を勧められたことがあります。
私の瞼は腫れぼったく、目は柿の種のような形で、非常にコンプレックスでした。
この一重瞼は母の遺伝で、父に似た姉の瞳はクリッとした二重瞼。
当時は今ほど性能の良いアイプチもなく、ダイソーで売っている二重瞼シールをハサミで切って形を整えて貼る方法で二重の癖付けをしたものです。
ハサミで形を微調整するのは結構大変。 指で触りすぎて粘着力が落ちてしまったり、連日の私用で瞼がかぶれてしまったり、なかなか二重にならなかった。
今思えば、私以上に母が二重瞼に執着しているようでした。
母曰く、寝起きの私はたまに二重瞼になってる事があって、「二重瞼の方が可愛い」とやたら母に言われてきました。
そして、小学校高学年くらいからでしょうか。「プチ整形」という気軽に二重瞼やらヒアルロン酸やら注入できる時代になってきたのは。
中学生になった頃、母が言うのです。
「目、二重にしちゃいなよ。 安くできるし。 埋没法って言ってね、切らないで二重にできるんだよ。しかも日帰りよ? 二重の方が可愛いよ。」
プチ整形とはいえ整形手術は批判の強いもので、「親からもらった体に~」というお決まりの道徳めいた思想があります。
特に美を売りにしている芸能人は一般の人間と生まれ持ったモノが違うのだから、「養殖モノ」でなく「天然モノの美」でないといけないような風潮は今も根付いている気がする。
でも、私は「母から整形を許可をしたことで娘のコンプレックスを開放させたい」のだと良い方に解釈していました。
でも、私は最後まで反対でした。
「整形なんて嫌!」という程の強い拒絶ではなく、なんとなくですが「したくなかったから」。 それに当時父が無職で、私も不登校児という状況でしたし。
いくらメスを使わなかろうが、格安で施術できようが怖いものは怖かったから。
夕方のニュースで「日帰りプチ整形!」なんて特集が組まれるのと比例して、「プチ整形失敗」「違法クリニック」「ヤブ医者」なんて恐ろしいニュースも見てきましたから。
それに、「一重瞼の事でイジメられて苦しい!」という程の経験やコンプレックスじゃなかったから。 もし、好きな人ができた時に「瞼をいじった」と正直に言えるだろうか。
だから最後までやんわりと断り続けました。
で、小説に話を戻します。
星良は激怒しました。「なんで病気でもないのに手術しなきゃいけないんだ」
私はこのシーンでハッとしました。 当時の私にわからなかった答えがわかった気がしたのです。
結局星良は根負けし、二重瞼にした事もあってか芸能界で成功しますが、母娘の亀裂は深まるばかりでした。
小説は面白くて一気に読みました。
この小説の一番皮肉な所は、りつ子は女優顔負けの美女なのに、娘の星良は死んだりつ子の母親に似たところじゃないでしょうか?
りつ子は若干ファザコンな所があり、ハンサムな父親が全てを投げ捨ててまで冴えない容姿の母と駆け落ちした事を小馬鹿にしたような描写がありました。
りつ子の両親はとても立派な人達で、特にお母さんはいろんな人に慕われていましたが、残念ながら律子は似ませんでしたね・・・。
読み終えた頃、シチュエーションは違えど、りつ子のような暴言を母に浴びせられていた事、先ほどの整形の事を思い出して悲しくて泣いてしまいました。
おかしいなぁ、当時の自分は傷ついていなかったはずなのに。
もしかしたら、自分で気が付いていなかったのでしょうか。
「恩知らず」「娘の癖に」「アンタの為に~」・・・。
それに、私自身の事に何かと口を挟む人で、母が勝手に決める事も多く、りつ子と母がシンクロしているように感じたのです。
今思えば、母が必要以上の二重の憧れを私に植え付けようとしていた気がする。
それに、あんなに安全で簡単と言われた板埋没法で失敗したニュースを一緒に観てたのに、万が一失敗した時のリスクを考えてくれたのだろうか?
母は情弱なので、近場で安いだけでそこに決めちゃいそう、マジで。
母はよく、山田邦子の話をしました。
「山田邦子のお母さんがね、
『邦子ちゃんは目さえ二重だったら美少女なのに・・・二重にしましょう』って言ったらしいのよ。 あの顔ででよ? で、山田邦子の返しも信じられないのよ~
『私はこの切れ長の一重瞼が気に入ってるの!!』 だって。 笑っちゃうよね~」
別に母に100%の悪意があったわけではなかったと思います。
でも、少しでも自分の発言が無神経だとは思わなかったのでしょうか?
私も私で、「よくわからないけど、そういう風に言われたら気分が悪い!」と、なぜ激怒しなかったのでしょうか?
小説の解説に書いてありました。
「毒母と娘の場合、細胞レベルまで融合しているから、切り離すのが難しい」と。
そうかもしれない。 縁を切っても苦しい。